2010/10/19

唐の截金1 西安大安国寺出土の仏像



鑑真和上の時代、中国ではどんな截金装飾が行われていたのだろう。


白石宝生如来坐像 西安大安国寺遺址出土 唐、8世紀半ば過ぎ 陝西省博物館蔵
『日本の美術373号截金と彩色』は、1959年に西安大安国寺遺址から出土した7頭の有翼馬に坐す白石宝生如来坐像(陝西省博物館蔵)の袈裟に置かれた文様で、田相部には赤地で目の細かい斜格子文が置かれ、条葉部には緑地で辻飾り・変り斜格子文を置いたものである。この白石像の制作年代を8世紀半ばを過ぎる頃とすれば、このような細かい截金の技法はすでに唐代の早い頃に成立していたとみてよく、その技法が戒壇堂四天王立像に取り入れられたことは考えられるという。
白石の等身大くらいの唐時代の仏像は幾つか見てきたが、どれも白かったので、白石という素材の白さを好んで、白いままの仏像に仕上げたものだと思っていたが、白石像は極彩色に荘厳されていたものが、色がはげてしまっただけだったようだ。
残念ながら同書の図版からは袈裟の截金装飾は見えない。
また、台座の内外区を青と緑に塗り分けた蓮弁に大小の菱形の截箔と截金による花文が散らされているという。
かろうじて台座部分の図版を見つけることができた。
『絵は語る2仏涅槃図』は、完成された截金文様の使用例が報告され、改めて唐代の技術的先進性に驚かされたという。
複雑に子葉を重ねた肉厚の連弁だ。その輪郭の厚みの部分にも截箔が張られていたようだが、截金装飾は雪の結晶のような花文だけで、蓮弁裏に散らされている。
全く同じ文様ではないが、菱形と直線を組み合わせた花文は東大寺戒壇堂四天王立像の截金文様に繋がりそうだ。しかし、直線の斜格子文や二重格子文などで花文を囲むというのは日本独特のものかも。

※参考文献
「日本の美術373号 截金と彩色」(有賀祥隆 1997年 至文堂)
「絵は語る2 高野山仏涅槃図」(泉武夫 1994年 平凡社)