2008/01/09

玉簾状ガラス製品も魔除け?-藤ノ木古墳の全貌展より

藤ノ木古墳の全貌展では北側被葬者のものとして、ガラス丸玉・ガラス玉・ガラス小玉が出土している。同展図録は展示物の写真が素晴らしいので、眺めているだけでも楽しい。そして驚いたのが、玉簾状ガラス製品の出土状況だった。びっしりと敷き詰められたように並んでいた。 そのガラス玉の間から平絹と緯糸が発見されたという。同展図録によると、ガラス玉約4000点、ガラス小玉8000点以上、ガラス丸玉(大・小)70点からなる簾状の構造物である。ガラス玉は縦65㎝、横20㎝の範囲で、約150個の連珠を横に27条つなぎ、黄色と青緑の列を交互に配置しているのだそうだ。橿原考古学研究所にはその復元品も展示してあった。紺色ガラス玉の並んだ部分を額に回して、背中に着用するものと見られているようだ。同展図録で大谷千恵氏によると、重量(復元品約1.8㎏)と絹糸の強度からすれば着装は無理である。ただし実際の遺骸への着装は、背中側に遺骸を包む繊維の上から紐で縛って着けていたということなので、これも金銅製歩揺冠同様死者の魔除けのためのもののようだ。

朝日放送で2007年11月2日に放送された 「蘇る古代ファッション 正倉院展2007」で、ファッションの話は藤ノ木古墳出土品にまで及び、ポーラ文化研究所蔵のトルクメニスタンの花嫁衣装(現代)との類似点などを同研究所の村田孝子氏が語っていた。今でもトルクメニスタンでは背中飾りを付けるが、それは背中から悪霊に襲われないようにする一種の護符らしい。ジャラジャラ音を鳴らすというのが魔除けのポイントともいう。 歩揺冠は文字通り「歩いたら揺れる」ように作ってあるので、揺れたら音がするだろう。ということは、歩揺のついたものは全て魔除けのためだったのだろうか。

音がするものと言えば、美豆良(みずら)飾りに取り付けられた垂飾りにもある。複数のガラス小玉の連が歩いて揺れるだけで音がするだろうが、その先の銀製剣菱形飾り金具も、揺れるとかなり音がしそうだ。
そして、もう一種類音がしそうなものがある。垂飾りに数個ずつ取り付けられた金銅製空勾玉である。復元品は、金銅製の板を管にして曲げ、両端部は後から鍛造し形を整えた。中に金製の小さな粒(丸)は純銀で代用し、納めてから棒状のガラスをカットし尾端の穴に差し込んでからガラスを溶着したと内堀豪氏は同書で述べている。管を塞ぐためにガラスを使っていることも面白いが、金の粒を入れていたのは、音が出るように作ってあったということだろう。 こんなにも厳重に魔除けやら護符などを身につけられただけでなく、頭部や足元にも置かれて黄泉の国に旅立っていった若者は、大和の出身なのか、渡来系の人物なのかわからないが、かなりの有力者の子息だったのだろうなあ。

※参考文献
「金の輝きガラスの煌めき-藤ノ木古墳の全貌-展図録」(2007年 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館)

※参考番組
「蘇る古代ファッション 正倉院展2007」(2007年 朝日放送)