2017/12/05

オルジェィトゥ廟の漆喰装飾1 浅浮彫とフレスコ画


スルタニーエのオルジェイトゥ廟は青いドームと入口上にタイル装飾があった。
平面図(○数字はアーチやイーワーンの位置を示す

ところが、入口を入って見上げたイーワーンにはタイルではなく、一面漆喰の装飾だった。
『ペルシア建築』は、内部の壁面は、当初、明るい黄金色を帯びた煉瓦で仕上げられ、部分的に小さな淡青色のファイアンス・タイルを嵌め込む方法で、角ばったクーフィー書体の大インスクリプションが表されていた。しかし1313年、この内装は変更され、プラスターを用いて再装飾された。変更後のデザインは多様で、レース状の大きなメダイヨンもあれば、モザイク風に彩色された植物文様もあるという。
現地ではフレスコ画に見えた。
レース状の大きなメダイヨン。
イーワーンの側壁にもメダイヨンが左右それぞれ3つずつ。画像がよくないが、微妙に凹凸がある。
この大きな花に見える文様の中にはアラビア(ペルシア)文字が組み込まれているし、文様帯にもインスクリプションが描かれている。
別の壁面の漆喰装飾はイスラームらしい幾何学文様の中にも花文が入り込み、全体に柔らかな感じを与える。
でも、文様の区画に切れ目が見える。小さな単位で作って、モザイクのように嵌め込んでいったのだろうか。
その下には革細工のような凹凸のある植物の文様帯。更に下には華麗なインスクリプションが、蔓草を絡めて表されている。
蔓草とインスクリプションについてはこちら
同書は、また神の啓示を伝える聖なるインスクリプションもあり、その起伏する文字は生き生きとしており、穏やかな流れるような律動を示すという。
彩色のない壁面も。

モスク内の漆喰装飾
ムカルナスには植物文様が、ラピスラズリ?の地に描かれている。
こちらのムカルナスは白地

二層目の漆喰装飾
① イーワーンは白地に植物文様が描かれているが、色はよくわからない。
植物文は陰刻されている。
壁面には白地にインスクリプションと植物文様が、青っぽい色で描かれている。
フレスコ画だった。

②のイーワーンと墓室側のアーチ
イーワーンの花文もインスクリプションを中心に置いて、2層に植物文を表す。区画の隙間を埋める植物文様は独特。
外側のアーチの装飾は凹凸が深く、上へ上へと伸びる植物の活力が表されているよう。

⑤ 浅いムカルナスが何層も重なっている。最下層は漆喰装飾もタイルモザイクも剥がされ、レンガの壁体が露出している。
①と同じように、白地に陰刻しているみたいだが、
下部を見ると陰刻だけでなく、植物文様を陽刻しているらしい。

⑦ 現在の入口の上のイーワーン
外側のアーチ
ピントがいまいちのため植物文様の凹凸がうかがえないが、両側のロゼッタ文は立体的に型作りして彩色または金箔を張り付けている。更に外側の植物文は浅浮彫で、金箔を貼ったか金泥を塗ったような輝きがある。
型押しかも知れないが、浅いレリーフがみごと。
壁面は①のイーワーンと同じようにインスクリプションが巡り、その下にはそっくりな植物文様が。隅の方を見ると、極浅いレリーフかなとも思う。

⑧のイーワーンはフレスコ画による装飾だった。
アーチの漆喰装飾はほとんど残っていない。イーワーン頂部には、これまでとは異なる植物文様が、インスクリプション帯で囲まれている。
奥壁上部には幾何学文様。小窓の下には、オルジェイトゥ自らによって隠されたモザイクタイルを出してあるが、釉薬が剥落しているため、タイルに見えない。
その下にインスクリプション帯を挟んで植物文様
植物文様は①と同じ。
しかし、側壁の文様はかなり違ったものだった。
丸い文様が何を表しているのだろう。桃や杏などの実?それが6つで六角形を並べたようにも見える。

漆喰装飾には浅浮彫による陰影の効果を狙ったものと、フレスコ画があった。
オルジェイトゥは、イスファハーンのマスジェデ・ジャーメ(金曜モスク)西翼に小礼拝室を造った。そのミフラーブの浮彫漆喰による装飾は、自身の墓廟の装飾とは全く違っていて、こちらも見事なもので、「オルジェイトゥ(ウルジャーイトゥー)のミフラーブ」と呼ばれている。


  オルジェィトゥ廟のタイル装飾←  →オルジェィトゥ廟の漆喰装飾2 埋め木

関連項目
オルジェイトゥ廟の漆喰装飾3 華麗なるドーミカル・ヴォールト
スルタニーエのオルジェイトゥ廟(ゴンバデ・スルタニエ)
アラビア文字の銘文には渦巻く蔓草文がつきもの
一重に渦巻く蔓草文の起源はソグド?
マスジェデ・ジャーメ オルジェイトゥのミフラーブ


参考文献
「イスラーム建築の世界史 岩波セミナーブックスS11」 深見奈緒子 2013年 岩波書店
「ペルシア建築」 SD選書169 A.U.ポープ著 石井昭訳 1981年 鹿島出版会