2014/02/21

古代マケドニア4 墓室の壁画にも蔓草文



ペラ考古博物館で何の気なしに撮った1枚のパネル。説明文を撮るのを忘れていたが、博物館で買った『Pella and its invirons』にその図版があった。

ペラ、東の墓域石櫃式墓室 後期クラシック時代、前300年頃
人物像の下の文様帯には唐草文もしくは蔓草文が色彩豊かに描かれている。

その後訪れたテッサロニキ考古博物館には同じような墓室が復元展示されていた。

墳丘墓AのⅡ墓 アエネイア(ネア・ミカイオナ) 前350-325年頃
『GUIDE TO THE ARCHAEOLOGICAL MUSEUM OF THESSALONIKE』(以下『GUIDE』)は、若い女性とその新生児の骨を納めた木製の箱を載せていた石積みの周囲に副葬品が幾つか置かれていた。副葬品は、キプロ式のアンフォリスコス1つ、4つのガラス製アラバストラ、10個の高品質の石膏細工のアラバストラ、内2つに金メッキ。そして金メッキされた青銅製の花冠だった。
壁面の基礎、トイコベイトは黒、大理石の擁壁は白とピンクで鮮明な色彩の文様帯まで表されるという。
もっと大きな墓室だと記憶していたが、写真に入り込んだ人物の大きさと比較すると、実際には小さかった。
左隅には色の異なる2つのアラバストラが、穴のあいた状態で置かれている。ガラスではなさそうなので、金メッキされたものと石膏のままのものだろう。
発掘時の状況が復元されている。
骨箱の置かれていた台、隅のアンフォリスコス、アラバストラが幾つか、そして日本風に言えば金銅製ギンバイカの花冠が上から見える。
ギンバイカの花冠については後日
最上部に描かれたものについて同書は、墓室の壁画は女性の部屋の壁面を再現している。棚に置かれたり、釘に掛けられた物を描いているという。

鮮明な文様帯について同書は、巻きひげや花が女神の間をうねる渦巻のフリーズという。

長辺は、中央に正面向きの女神の顔が描かれ、そばから出た蔓が一定間隔で上下に蛇行しながら、巻きひげや花を出している。
花は一つ一つ種類が異なっていて、上側の巻きひげはリボンのような幅があり、色も鮮やかで、下側のものは白っぽく、リボン状にはなっていない。
そして女神と蔓の外側には、横向きのアカンサスの葉が2枚はっきりと描かれている。
節にもアカンサスの葉らしきものが付き、そこから次の蔓、花、巻きひげが出ている。
やはりアカンサスの葉とリボン状の巻きひげは、表は赤、裏は緑と色分けされている。
1羽の白いハトは、その影まで表されている。
文様帯の巻きひげは、1本で螺旋状にまきながら伸びているものが多かったが、ここでは、短い巻きひげが3本になっている。

短辺では女神は横向きで表され、やはりアカンサスの葉や蔓が両側に出ている。
しかし、蔓が蛇行するには長さが足りないため、アカンサスの葉から分岐するのは、白い巻きひげと、切れ込みのある葉、あるいは花だ。
長辺の左端。やっぱり葉かな。
このような植物文は、唐草文ではなく蔓草文と呼んだ方が良いだろうか。

古代マケドニア3 ベッドにガラス装飾← →古代マケドニア5 黄金製花冠とディアデム
 

関連項目
アカンサスの葉が唐草に
アカンサス唐草文の最初は?
古代マケドニア6 粒金細工・金線細工

古代マケドニアの唐草文2 ペラ
古代マケドニアの唐草文1 ヴェルギナ

※参考文献
「Pella and its invirons」 Maria Lilimpaki-Akamati Ioannis M.Akamatis 2003年 MINISTRY OF MACEDONIA-THRACE
「GUIDE TO THE ARCHAEOLOGICAL MUSEUM OF THESSALONIKE」 JULIAVOKOTOPOULOU 1996年 KAPON EDITIONS