ホシガラスが埋めて食べ忘れた種のように、バラバラに芽を出した記事が、枝分かれして他の記事と関連づけられることが多くなった。 これから先も枝葉を出して、それを別の種から出た茎と交叉させ、複雑な唐草に育てて行きたい。
2013/10/22
オリンピア考古博物館2 後期ヒッタイトの青銅板
第2室に入る前に、アッシリアの青銅板のようなものを撮影していた。
青銅板 前8世紀 後期ヒッタイト時代のアッシリア様式
『OLYMPIA』は、3枚の大きな後期ヒッタイトの青銅板がある。それらはアッシリア様式(前8世紀)で、東方より請来され、木造の建物か像に張り付けられて再利用されていた。打ち出しで帯状に犠牲の動物を連れた祭司、騎士などの行列が表されているという。
アッシリアではなく、後期ヒッタイトのものだった。
上段 不明
中段 生命の樹のようなものを中央に置き、互いに後方を向いた羊のような動物の対偶文
下段 不明
上段 生命の樹の両側で互いに後方を向いた大角羊と、それを襲うライオン
上写真中段の羊もライオンに襲われるのを気にして後ろを向いているのかも知れない。
中段 わかりにくい
下段 犠牲の牡牛を連れた祭司の行列
その復元図
中段の一番大きな区画には、2体の有翼精霊が小さな生命の樹を挟んで紐のようなものを引いている。その上方には有翼円盤の中に円環を持つ神が表されている。
有翼精霊の下には牡牛の対偶文。
1段目 不明
2段目 カウナケスを着た人物に両側から円環を持つ神が剣を向けている
3段目 逆さにしたライオンの後肢を両側から人物が掴み、左の人物がライオンに刃を向けている
4段目 左に向かって進む騎馬兵たち
1段目 左に向かう神に礼拝を捧げる人々の列
2段目 生命の樹に前肢を掛けて向かい合う有翼獣
その復元図
人物の服装や有翼獣の体などがかなり細密に打ち出されている。
アッシリア・レリーフの有翼精霊とどのくらい似ているだろう。
守護聖霊と聖樹 紀元前875-860年頃 ニムルド北西宮殿I室 石製板17? 縦141.0横95.0厚4.0 大英博物館蔵
アッシリアの有翼精霊は翼が4枚だが、後期ヒッタイトの有翼獣は翼が2枚だけのようだ。
また後期ヒッタイトの有翼獣は胸から上腕にかけて鱗状になっていて鳥のようだが、アッシリアのものは人間の体風だ。
このような鱗状の表現は、ウラルトゥの有翼精霊の羽根に見られる。
有翼精霊像 前8世紀後半 アルトゥンテペ出土 象牙 高12.4㎝ アナトリア文明博物館蔵
羽根は上下に2枚ついていて、アッシリアの有翼精霊に近い。
後期ヒッタイトのアッシリア様式の美術や、新アッシリア時代の青銅製飾り板はイスタンブールの考古博物館で見たことがある。
木製扉の青銅板 時代不明
アッシリア時代の打ち出し青銅板は薄作りのものだった。
戦車や兵士の行進図
後期ヒッタイト時代に造られた青銅板よりも人物も馬も細身に表されている。
後期ヒッタイト時代の打ち出し青銅板は、表されたテーマも異なるが、打ち出し方が強くより立体的で、人物や馬などの姿もずんぐりしている。
ひょっとすると、その違いはイスタンブール考古博物館蔵の青銅板の方が古い様式だからだろうか。
また、オリンピア考古博物館蔵の後期ヒッタイト時代の青銅板は、断片とはいえ、形が平たい板に張り付けたものではなさそうだ。元はもっと立体的なものだったのではないだろうか。
オリンピア考古博物館1 ミケーネ時代← →オリンピア考古博物館3 青銅の鼎と鍑
関連項目
生命の樹を遡る
ウラルトゥの美術3 象牙
1-37 イスタンブール考古学博物館7 古代オリエント館2
※参考文献
「OLYMPIA THE ARCHAEOLOGICAL SITE AND THE MUSEUMS」 OLYMPIA VIKATOU 2006年 EKDOTIKE ATHENON S.A.
「世界美術大全集東洋編16 西アジア」 2000年 小学館