2011/12/23

第63回正倉院展3 碧色はへきいろと読む

いつから碧色を「みどりじ」ではなく「へきいろ」と読むようになったのだろう。
1985年、第37回正倉院展では「みどりじ」だった。

碧地金銀絵箱 みどりじきんぎんえのはこ
ところが、今年は「へきいろ」になっていた。

碧地金銀絵箱 へきじきんぎんえのはこ
そして、藍色に見えた布も碧色だった。

御袈裟幞袷 おんけさのつつみのあわせ 北倉 長130幅107
同展図録は、これを碧綾(へきあや)を2幅に継いで袷にした風呂敷風の包みである。
文様は、小四弁花文を千鳥に配したもので、染色は、藍一色による後染めと見られ、鮮やかな碧色を今も残しているという。
藍で染めていても「へきいろ」と呼ぶらしい。そんなに色の呼び名はおおざっぱなものだったのだろうか。
織り組織は、地と文様の綾目の方向を逆さに織った四枚綾の綾地異方綾文綾である。正倉院の染織品中には、綾地綾のものも平地綾のものも両方存在するが、前者は組織がより複雑で文様がくっきりと浮かび上がるので、後者よりも技法上進んだ組織と考えられているという。
確かに平地綾は、斜めから見ないと文様が浮かんでこないので、見づらいが、今回のこの織物は、花文がよくわかった。
また、このように文様を上下交互に並べるのを「千鳥に配す」という表現をすることもわかった。
碧色とされる御袈裟幞袷に似た色で斜めの縞の衣服があった。

縹纐纈布袍 はなだこうけちのぬののほう 南倉 丈125幅206
袍は上着のことである。律令時代において、宮廷の公務を行う際に着用された。
この袍の生地には、細い麻糸で織り上げた薄手の麻布(細布)が用いられている。華やかな襷文様が目に留まるが、染め方は、まず生地を片隅から斜めに折りたたんでおいて、随所を粗く縛って一色で染め、次に逆の斜め方向にたたみかえて、同様な方法で別の一色を染めたようで、纐纈の一種と考えられる。
近年の染料調査によれば、縹色は藍染め、紅色は紅花染めであることがあきらかになった。現在は、紅花染めの部分が褪色しているのが、何とも惜しまれるという。
この色が碧色ではなく縹色なのに、もっと濃い御袈裟幞袷が碧色というのはどういうことだろう。

※参考文献
「第63回正倉院展図録」(奈良国立博物館編集 2011年 財団法人仏教美術協会)
「第三十七回正倉院展図録」(1985年 奈良国立博物館)